【吉田類 大衆酒場100選】 沖縄島んちゅの熱き心よ <島 飯田橋>

【吉田類 大衆酒場100選】
沖縄島んちゅの熱き心よ

日刊ゲンダイ2014年2月27日 掲載

http://gendai.net/articles/view/syoku/148299


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(C)日刊ゲンダイ

<島 飯田橋>

 東京のお伊勢さまこと、縁結びの神様として人気の東京大神宮のお膝元、飯田橋は富士見の一角に歩を進める。目指すは昭和36年創業の沖縄料理店「島」である。

 引き戸を開ければ、三線の音色が響き、エイサー踊りでお出迎え……とはならない。テーブルが整然と並び、らしいといえば、棚の上の壺屋焼のシーサーくらい。島んちゅの通う現地の定食屋のようだ。

 テーブルに座り、とりあえずと沖縄の定番、オリオンビールの生を550円で。軽い喉越しを楽しみ、プッハーと昼間の疲れにおさらばする。そしてジョッキ片手に店内を見渡せば、壁に飾られた額に目が留まる。「不屈」とある色紙、その脇に1枚の写真。女将の山本文江さんから声がかかった。
「ご存じかしら。瀬長亀次郎って。沖縄の本土返還運動に奔走した政治家で、沖縄の英雄なんですよ。それは生前、ご本人が書かれた色紙。うちは昔、沖縄返還同盟の活動家たちの拠点でもあったんです」

 最盛期には、毎晩のように活動家が集い、侃々諤々(かんかんがくがく)、泡盛のボトルを何本も転がしていたのだという。酔いが回ると、決まって聞こえてくるのが「沖縄を返せ」。復帰運動を象徴する歌を肩を組み、腕を振り、拳を突き上げて、声を張り上げる。宴は夜中まで続いたそうだ。

 東京における沖縄返還運動の拠点となったのは、店を創業した先代の深い郷土愛からこそのものだったのだろう。その心は料理にもしっかりと息づいている。ゴーヤーチャンプル800円が運ばれてきたときだ。
「昔ながらのつくりかただと、お肉は入れないんですよ。先代が大切にしていた味ですし、よく使われるポークランチョンミート(ソーセージ)は進駐軍が持ち込んだものでしょう?」

 守るべきは島んちゅの流儀なのだ。口に運べば、程よい塩気の中にゴーヤーのほろ苦さが広がり、島豆腐から出汁(だし)のうま味が染み出してくる。ラフティー800円には砂糖を使わない。泡盛と醤油に昆布でグツグツと7時間も煮込んだ豚肉は実に軟らかく、温かい。泡盛の瑞穂35度680円がズーンとくる酔いを運んできた。杯を重ねるごとに、不屈の文字が大きくなる。本土復帰から42年、いまだに島のど真ん中に米軍基地がドーンと居座っている光景を思い出した。

(取材・カメラ 吉田慎治)

■沖縄料理の先駆け

▽吉田類…「東京の沖縄料理の先駆けといっていいでしょう。返還運動が盛んだった頃、女将は学生で、店の2階で暮らしていたそうですが、うるさくて勉強どころじゃなかったとか。活動家の熱い血潮が目に浮かんでくるようですね」

▼よしだ・るい 高知県出身。画家、イラストレーターの傍ら、酒場詩人として全国の酒場をめぐる。著書に「酒場歳時記」など。BS―TBS「吉田類の酒場放浪記」出演中。





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