【書評】 イタリア人が日本の建築表現の自由さを嘆く 『イタリア人が見た日本の「家と街」の不思議 』

【書評】 イタリア人が日本の建築表現の自由さを嘆く
NEWSポストセブン2016.04.01 07:00

http://www.news-postseven.com/archives/20160401_397320.html

【書評】『イタリア人が見た日本の「家と街」の不思議』ファブリツィオ・グラッセッリ・著、水沢透・訳/パブラボ/1000円+税

『イタリア人が見た日本の「家と街」の不思議 』ファブリツィオ・グラッセッリ著、, 水沢透訳(星雲社 1,080円税込)


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イタリア人が見た日本の「家と街」の不思議
パブラボ
2016-01-25
ファブリツィオ・グラッセッリ

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イタリア人が見た日本の「家と街」の不思議 [ ファブリツィオ・グラッセッリ ]
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ファブリツィオ・グラッセッリ 水沢透 パブラボ 星雲社発行年月:2016年01月 ページ数:221p


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基本情報
発売日: 2016年01月
著者/編集: ファブリツィオ・グラッセッリ, 水沢透
発行元: パブラボ
発売元: 星雲社
サイズ: 新書
ページ数: 221p
ISBNコード: 9784434204920

【内容情報】
せっかくの家を築40年で建て替える!?私の国では築400年も普通です。在日歴20年のイタリア人建築家がニッポンの「家と街」で感じた多くの「なぜ?」を分析し解決策まで提言する。愉快!痛快!!「住まい」の比較文化論。

【目次】
1 そうだったのか!イタリアと日本の問題点
2 「空間をつくる」という発想
3 こんなもんじゃないはず!?日本の技術力
4 「見せたがり」vs.「カネ万能主義」!?
5 小さな村にできること
6 情熱と誇りー未来への希望

【著者情報】
グラッセッリ,ファブリツィオ(Grasselli,Fabrizio)
1955年、イタリア・ミラノに近いクレモーナに生まれる。ミラノ工科大学を卒業後、建築家として数か国で活躍し、その後日本に魅せられ永住を決意。東京に住んで20年余り。イタリアの芸術や文化、語学を教える正式の免許を持ち、こちらをもう一つのライフワークとしている。現在はイタリアで最も古い伝統と権威を持つ文化団体「ダンテ・アリギエーリ協会」東京支部の会長を務め、同団体が設立したイタリア語学校「イル・チェントロ」校長でもある

水沢透(ミズサワトオル)
1963年、東京生まれ。出版社で女性雑誌の編集者として9年間勤務の後、フリーの文筆家に。イタリアの文化と生活、人間に魅かれて95~96年にシエナ、フィレンツェ、ミラノに留学

【評者】井上章一(国際日本文化研究センター教授)

 日本人は、強い自己主張をきらう。まわりとの調和を大事にする民族だと、よく言われる。和をもって尊しとする。そんな国民性論を耳にすることも、ままある。

 しかし、街並みと建築に関しては、この一般通念がまったくあてはまらない。市中のビルは、街全体の統一感に気づかうことなく、てんでんばらばらの色や形で、たっている。隣接する建築群の顔色をうかがって、自分のデザインをととのえたりも、まずしない。建築の表現については、地権者や建築家の自由が、ほぼ完全にまもられている。

 くらべれば、ヨーロッパ諸都市のほうが、ずっと不自由である。あちらのビルは、都市景観のなかに表現を埋没させるよう要請される度合いが強い。きわだつ自己表現は、おおむね禁じられている。

 日本の社会科学は、これまでずっと言いつづけてきた。西洋は近代的な自我を開花させたが、日本は集団主義に流されやすい、と。街並みをめぐっては、まったく正反対の命題がなりたつにもかかわらず。社会科学は都市景観から目をそむけてきたのだと、そう言わざるをえない。

 著者はイタリア人で、在日二〇年におよぶ建築家である。その体験をつうじ、こう言いきる。日本には、ヨーロッパだと考えられない建築表現の自由がある。「ヨーロッパの国々から見たら、ほとんど『何でもあり』の状態だ」。

 と言っても、そんな自由を著者はうらやましがっているわけでは、けっしてない。日本びいきの著者は、大好きな日本のために、この野放図な自由をなげいている。そして、日本の都市計画家たちに、さまざまな提言をこころみる。こうすれば、日本の都市ももっと美しくなるんじゃあないか、と。

 私じしんは、こういう提案を聞かされても、あまりふるいたたない。たぶん無理だろうなと、悲観的にうけとめる。ただ、近代化の過程で、どうして日本がこうなってしまったのかは、つきとめたく思う。歴史家の端くれである私をはげましてくれた一冊である。

※週刊ポスト2016年4月8日号