<食卓ものがたり> 種付け3年 珍味も復興へ ホヤ(宮城県塩釜市) (東京新聞2014年6月28日)

【暮らし】
<食卓ものがたり>種付け3年 珍味も復興へ ホヤ(宮城県塩釜市)
東京新聞2014年6月28日

http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2014062802000135.html


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「こういう感じでロープに付いているの」とホヤを手にする奈良坂さん=宮城県塩釜市で

 宮城県塩釜市「塩釜水産物仲卸市場」の午前六時。あちこちで浅い箱に盛られているのは、夏に旬を迎えるホヤだ。いぼだらけで、大きさは人の拳ほど。深い赤色は南国の果物が熟しているようにも見える。

 「『海のパイナップル』ともいうからね。ひとつ食べてみな」。市場に店を出す奈良坂勝二(ならさかかつじ)さん(62)が包丁を入れる。殻をむくと、黄色い身が出てきた。わたを洗い流して切り分ける。

 口にした途端、香りがはじける。海のミネラルを抽出したような揮発性の香りだ。遅れて苦味が来た。食べた後は口の中がさわやかだ。街のすし店で食べたことはあったが、まったく別物と言って差し支えない。

 ホヤは海底や養殖用ロープにへばりつき、体内に海水を循環させて栄養分を得ている。水揚げして海水が途絶えると、身の劣化が始まる。二十四時間を超えると臭いが出始め、好き嫌いが分かれる原因でもある。「ホヤはうまいんだよ。しっかりアピールしてよ」。奈良坂さんは話す。

 この珍味も、東日本大震災でいったんは壊滅状態に陥った。出荷できる大きさになるには三年かかる。震災後に種付けされたホヤが、今シーズンになって市場に出始めたのだ。海の復興が進みつつある表れだ。

 だが、物が戻っても、人が戻らないとうまさは届けられない。復興の道半ばにあるのは加工品だ。ホヤの塩辛をつくって半世紀、海産物業「十字屋」社長の下舘達也さん(60)は言う。「いい塩辛ができたのも、揚がったばかりのホヤをじいちゃん、ばあちゃんが浜で殻むきしてくれたおかげ。浜に人が戻らないと、いい材料は手に入らない」

 浜は津波で流され、「じいちゃん、ばあちゃん」の多くも仮設住まいだ。住宅が高台に移れば、浜仕事も遠くなる。青森県や北海道産でやりくりしてきたが、「この先は正直、危機感がある」と言う。

 その塩辛を試してみた。苦味が引き出され、生のホヤ以上にホヤらしい。「そりゃそうです。加熱しない生のホヤを使っていますから」と下舘さん。本当はおかわりがほしかった。

  文・写真 三浦耕喜

◆味わう

 ホヤは動物に分類され、幼生の時はオタマジャクシのように泳ぐ。産卵期は冬で、6月から8月にかけてが旬とされる。

 水揚げの量や大きさにもよって変動するが、塩釜水産物仲卸市場では、一個100円から200円ほどだった。同市場はプロのほか一般客も買い物できる。調理方法も教えてくれる。JR仙石線の東塩釜駅から徒歩20分ほど。日曜日には朝市も開かれる。詳しくは同市場=電022(362)5518=まで。

 十字屋ではホヤの塩辛のほか、ホヤの薫製、酢漬けもつくっている。ホヤの塩辛は110グラム入りで一個800円(税別)。全国発送も受け付けている。

問い合わせ
十字屋
℡ 022(362)5108

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