動き出すSL銀河、飛躍への期待と課題 東北復興の起爆剤へ、42年ぶりに復活

動き出すSL銀河、飛躍への期待と課題
東北復興の起爆剤へ、42年ぶりに復活
大坂 直樹 :東洋経済 記者 2014年03月07日

http://toyokeizai.net/articles/-/32377

動き出すSL銀河、飛躍への期待と課題 東北復興の起爆剤へ、42年ぶりに復活


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 宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』を生んだ岩手県。かの地で眠りについていた蒸気機関車(SL)が42年ぶりに復活した。

 C58形239号。1940年に製造され、岩手県内で活躍した。1972年に引退した後は、岩手県営運動公園に展示保存されていた。そのC58が4月12日からJR釜石線(花巻―釜石間)で定期運行を行う「SL銀河」として、復活することになったのだ。 

 マスコミ向けの試乗会が行われた3月2日、「SL銀河」の運転士は目を輝かせながらこう語った。「子どものころ、運動公園のSLに乗って遊んだ。そのSLがこうして蘇って、それを自分が運転するなんて、すごいです」――。

採算度外視の大型投資

 東日本大震災で被災した東北復興の起爆剤として、JR東日本は“3本の矢”を投入した。海岸沿いの景色とともに食事を楽しめる列車「東北エモーション」、子供に大人気の「ポケモンウィズユートレイン」、そしてSL銀河だ。

 「移動手段としての鉄道ではなく、乗って楽しめる、乗ること自体が目的となるような列車を目指した」(JR東日本の照井英之・運輸車両部次長)。製作費は、機関車復元に要した費用から保守施設の建設費などを含め、総額20億円。JR九州の豪華観光列車「ななつ星 in 九州」の製造費用が30億円であることを考えると、かなりの規模の大型投資である。

 もっとも、ななつ星の1人当たり料金は最低でも18万円だが、SL銀河の乗車に必要な金額は乗車券(花巻―釜石間なら1620円)と指定席券(820円)合わせても2440円。仮に全席が埋まったとしても1回の運行で得られる運輸収入は40数万円にすぎない。採算性は度外視しているといってもよい。

魅力的な車両


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内装も『銀河鉄道の夜』をイメージしている

 SLが牽引する車両のデザインは工業デザイナーの奥山清行氏が担当。『銀河鉄道の夜』の世界観をモチーフにしたという。夜空を思わせる青い塗装に星座や沿線に生息する動物をちりばめた外観は、確かに、これから銀河鉄道に乗って星の海へ飛び立つような気分にさせる。

 各車両にはギャラリーが設けられており、宮沢賢治ゆかりの品々や南部鉄器をはじめとした東北の名産品が展示されている。眺めているだけで楽しくなり、車内で販売されたら飛ぶように売れるだろう。また、JRでは初となるプラネタリウムも設置されている。定員8人で、約10分の映像を楽しむことができる。

 ユニークなのは、乗客が乗る車両が客車ではなく、ディーゼルエンジンを装備した気動車であること。機関車が牽引するのは動力を持たない客車というのが通常のパターンだが、釜石線には勾配のきつい区間があり、牽引に支障が出るリスクを考慮して、自力走行が可能な気動車を客車として使うことにした。


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JRでは初となるプラネタリウムが設置されている

 「客車と呼んでも間違いではないが、当社では“旅客車”と呼んでいる」(JR東日本)。旅客車のアシストは急勾配区間のみに限定される予定だが、自力走行という利点を生かせば、将来はSLが走れない他路線を旅客車のみで走ることも可能だ。魅力的な車両だけにSL抜きで運行しても人気となるに違いない。

 近代製鉄業発祥の地である釜石にとっても、SL銀河への期待は大きい。釜石の駅前には、日夜を問わず高い煙突から蒸気を吐き続ける新日鉄住金・釜石製鉄所の威容が広がる。「鉄の町」釜石へ「鉄の塊」であるC58が乗り入れる様は壮観だ。

 「SLに乗って、ぜひ現地の様子を見に来てほしい」と、釜石市の菊池公男・観光交流課長は言う。40年ぶりに復活したSLは、釜石復活のシンボルとしても期待されている。

観光資源化には課題山積


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沿線では歓迎ムードが高まっている

 とはいえ、そこにはいくつかの課題がある。SL銀河の運行は週1往復。土曜日の午後3時04分に釜石に到着し、日曜日の10時55分に釜石を出発する。「市内観光や沿岸部まで足を延ばすことを考えれば、土曜日の夜は市内に宿泊していただくことを期待している」(菊池課長)。

 だが現在、釜石市内の宿泊施設は復興工事関係の作業員たちで、連日ほぼ満室の状態だ。今年7月にはルートイン、来年3月にはJRも釜石駅前にホテルをオープンする。ただ、「まとまった空室が出ると、建設業者が長期で押さえてしまうケースも多い」(地元のホテル関係者)という状況で、ホテル需給の逼迫は当面続く。

 NHKの朝ドラ「あまちゃん」で有名になった三陸鉄道の南リアス線(釜石―盛間)が4月5日に全線復旧する。釜石に到着したら、三陸鉄道に乗って沿岸部を訪れたい人もいるだろう。だが、復旧後の三陸鉄道とSL銀河の接続はスムーズではない。1時間強の待ち時間を余儀なくされる。

 釜石周辺の観光スポットへのアクセスもよいと言いがたい。自動車がないと行けない場所もあり、定期バス投入によるアクセス改善などが求められる。

 「乗って楽しめる」SL銀河が、釜石の新たな観光資源になることは間違いない。だが、鉄道だけでは観光が成り立たない。SL銀河で釜石駅に到着した観光客が、ろくに観光せず、その日のうちに帰ってしまうことは、釜石市としても避けたいはず。地元観光業界や他の交通機関も巻きこんだ、あらゆる側面からの議論が必要だ。


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