「京都と偽京都」 作家・森見登美彦の京都案内 (週刊朝日 2014年3月7日号)

「京都と偽京都」 作家・森見登美彦の京都案内
(更新 dot.asahi.com2014/3/ 4 11:30)

http://dot.asahi.com/wa/2014022700025.html


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京都の街を案内してくださった、森見登美彦さん(撮影/写真部・松永卓也)


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聖なる怠け者の冒険
森見登美彦著
定価:1,680円(税込)


「聖なる怠け者の冒険」森見登美彦著(朝日新聞出版 1,680円)


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【文学/日本文学小説】「何もしない、動かない」ことをモットーとする社会人2年目の小和田君。ある日、「ぽんぽこ仮面」なる怪人から「跡を継げ」と言われるのだが……朝日新聞連載時より大幅に加筆修正をし、ダイナミックに一新! 著者3年ぶりの単行本。


聖なる怠け者の冒険
朝日新聞出版
2013-05-21
森見 登美彦

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森見登美彦 朝日新聞出版【本屋大賞ノミネート作】 発行年月:2013年05月 ページ数:339p サ


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・発売日:2013年05月
・著者/編集:森見登美彦
・出版社:朝日新聞出版
・サイズ:単行本
・ページ数:339p
・ISBNコード:9784022507860

【内容情報】
一年ほど前からそいつは京都の街に現れた。虫喰い穴のあいた旧制高校のマントに身を包み、かわいい狸のお面をつけ、困っている人々を次々と助ける、その名は「ぽんぽこ仮面」。彼が跡継ぎに目をつけたのが、仕事が終われば独身寮で缶ビールを飲みながら「将来お嫁さんを持ったら実現したいことリスト」を改訂して夜更かしをすることが唯一の趣味である、社会人二年目の小和田君。当然、小和田君は必死に断るのだが…。宵山で賑やかな京都を舞台に、ここから果てしなく長い冒険が始まる。

【著者情報】
森見登美彦(モリミトミヒコ)
1979年奈良県生まれ。京都大学農学部卒、同大学院修士課程修了。2003年『太陽の塔』で第一五回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、小説家デビュー。07年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞、10年『ペンギン・ハイウェイ』で日本SF大賞受賞


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 昨年、3年ぶりの長編小説『聖なる怠け者の冒険』(朝日新聞出版)を出版した森見登美彦さん。本屋大賞にもノミネートされているが、舞台は、自身も学生時代を過ごした京都だ。小説の舞台となった場所を特別に案内してもらった。

【森見さんご案内の京都写真はこちら】

森見登美彦が歩く“聖なる怠け者”の京都案内
http://dot.asahi.com/photos/photogallery/archives/7649/

昨年、3年ぶりの長編小説を出版した森見登美彦さん。
舞台は、自身も学生時代を過ごした京都だ。
小説の舞台となった場所を特別に案内してもらった。


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京都の街を案内してくださった、森見登美彦さん


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(1)錦湯
錦市場にほど近い、昭和2年創業の銭湯。今では珍しい常連の名前入りの柳行李が並ぶ。湯は熱め。店主の趣味のジャズが流れる
中京区堺町通錦小路下る八百屋町535/営業:16~24時/月曜定休



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(2)スマート珈琲店
『聖なる怠け者の冒険』の主人公の上司、後藤所長は「充実した土曜日の朝は、熱い珈琲とタマゴサンドウィッチから始まる」と語る
中京区寺町通三条上る天性寺前町537/営業:8~19時/無休



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スマート珈琲店のタマゴサンドウィッチ


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(3)八兵衛明神
柳小路にある。荒れ果てていた杜を、隣にある肉料理や「御二九と八さい はちべー」が修復し、管理。本の中では、登場人物が「八兵衛明神の使いである」と言うなど、重要な役割を果たしている
中京区新京極四条上る中之町577


撮影・松永卓也(写真部)
週刊朝日 2014年3月7日号

*  *  *
 京都を舞台にして小説を書くから、「よほど京都が好きなんですね」と言われる。そういうときは、いつも申し訳ない気持ちで一杯になる。ごめんなさい。ごめんなさい。好きといえば好きなのだが、普通の好きとは言い難い。私はリアルな京都のことは知らず、ましてや「京都通」などにはほど遠い人種である。私は自分の妄想と言葉で作った京都に惚れているのであり、いわば狸の化けた偽京都こそが私の京都なのだ。

「私が書いているのは『偽京都』なのですよ」

 しかし、なかなかこれは言いにくい。

 一度こういうことを言ってしまえば、「偽京都とはなんぞや?」ということから説明せねばならず、私にとって小説とは何かということを説明することになっていく。京都について聞かれるたびにそんなことを喋ってたら、脳と喉から血が出るのだ。

 そういうわけで私はボンヤリとした顔で笑ってごまかすのだが、やっぱり私の書いているのが偽京都であるという事実はゆるぎなく、申し訳ない気持ちでぽんぽこりんである。

 もちろん、いくら小説が個人的妄想の産物だとはいえ、虚空から生まれるわけではない。必ず現実の材料がある。京都という街には、そういう妄想のタネになるものがたくさんあるのは確かだ。歴史、風景、人々の暮らしが絡み合い、タネを続々と生み出してくれるのだろうか。『聖なる怠け者の冒険』という小説を書き始める前、私は四条烏丸のそばに住んでいた。週末になると、ふらふらと街を歩いた。それを「取材」とは言いたくない。歩きながら妄想のタネみたいなものを、気まぐれに一つ一つ拾うだけのことだ。

 いつ使うのか分からないタネをとりあえず集めて保管しておくのが小説家の仕事である。

「錦湯」にしても、「スマート珈琲店」にしても、「柳小路と八兵衛明神」にしても、そんなふうに歩きながら拾い集めた妄想のタネである。

 そのタネを発芽させて、私なりの肥料をやって育てていったら、偽京都が毛深くムクムク膨らんで、『聖なる怠け者の冒険』になった。

 そういうわけで、もし小説の舞台を訪ねるなら、幻の偽京都を目指すこと。そのために必要なのは妄想力である。

『聖なる怠け者の冒険』では、膨れあがってどうしようもなくなった偽京都にオトシマエをつけるために、八兵衛明神にお出ましを願った。

 もし柳小路という路地がなく、八兵衛明神という神様がそこにいらっしゃらなければ、小説は終わらなかった。とはいえ、そのために八兵衛明神様の正体を好き勝手に妄想したのはいささかやりすぎであったと反省している。天罰で毛深くなってもしょうがない。

 というわけで、柳小路を通るたびに「本物の」八兵衛明神様に謝っている。

※週刊朝日  2014年3月7日号

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