【吉田類 大衆酒場100選】 名物の合い鴨焼きで幕を開ける、魅惑の焼き鳥コース

【吉田類 大衆酒場100選】
名物の合い鴨焼きで幕を開ける、魅惑の焼き鳥コース
日刊ゲンダイ2014年1月30日 掲載

http://gendai.net/articles/view/syoku/147593


画像

(C)日刊ゲンダイ

<ほさか 新橋>

「ゆうべ閑古鳥が鳴いたと思ったら、今夜はしっちゃかめっちゃかなんだから。長年やってても、分からないもんだよ」
 ご主人の保坂幸五さんは苦笑いを浮かべながら、もくもくと煙を上げる焼き台へ向かっていた。

 新橋は日比谷口からSL広場を抜けて左側の路地にある烏森神社。パワースポットとして若い女性も集まる参道で「鳥」の暖簾をさげて45年の「ほさか」は、中高年男のオアシスだ。小さなカウンターとテーブル席は宵の口から満員で、生ビールのジョッキをあおる音、焼き鳥を頬張る笑顔、明るい話し声がこだましている。焼き鳥の焼きあがるジュージューは飲んべえの心を高める伴奏か。保坂主人の串さばきは指揮者のそれに見えてくる。良い夜だ。

 止まり木に座ると、まずは合い鴨焼き147円(1本)が2本供される。これが店の流儀、名刺代わりとでも言おうか、店主のこだわりなのだ。瓶ビール(中)578円をグビリとやって、頬張った。この界隈にあった焼き鳥の名店「つるや」で修業すること15年、ご主人が受け継いだ伝統の味である。噛むほどに鴨肉から熱い脂があふれ出し、野趣あふれるうま味が広がっていく。

すなぎも焼き、もつ焼き、つくね焼き、ぎんなん……1本147円の串にほね付き焼き、手羽先焼き各294円と、メニューのバラエティーは多くはないが、えり抜いたものなのだろう。一見客が味わい尽くすなら、コースがいいという。メニューに載ってはいないが、5種10本1470円と7種12本2200円の2コースあり、5種コースを頼む。と、最初に出てきたのはもつ焼き。レバーだ。程よく焦げあがっていると思ったら、中はミディアムレア。極上の二重構造である。日本酒420円をチビリチビリとやっていると、頬が緩んでいくのが分かる。

 つくね焼きはムネとモモ肉をミンチして、合い鴨の脂を加えたもの。ユズの風味がほのかに漂い、春の足音を想像した。

 コースはあっという間に幕を閉じた。春の予感も消え、また寂しい中高年の夜に逆戻りでは寂しい。そこで名物の鳥スープ315円である。口をつければ、透き通った、だけどしっかりとやさしいダシが疲れた胃腸を包んでいく。一瞬また、春の花が脳裏に浮かんだ。

 複数でワイワイもいいが、孤独な男にもちゃあんと居場所がある。静かに目を閉じて余韻を楽しんだ。
(取材・カメラ 吉田慎治)

■味がいい証し

吉田類…「10年ほど前でしょうか。烏森神社の参道の両脇に小さな酒場が軒を連ねていたのを覚えています。今じゃそれも10軒足らず。『ほさか』は2番目に古い店となりました。まあ、受難の時代に生き残っているのですから、それだけ味がいい証しですね。丁寧に焼かれた焼き鳥は試す価値がありますよ」

▼よしだ・るい 高知県出身。画家、イラストレーターの傍ら、酒場詩人として全国の酒場をめぐる。著書に「酒場歳時記」など。BS―TBS「吉田類の酒場放浪記」出演中。






吉田類の酒場放浪記 其の零 祝10周年 2003 東京下町 居酒屋をゆく/なにわ大阪 居酒屋をゆく/吉田類DVD/邦画TV
ゲオEショップ楽天市場店
タイトル吉田類の酒場放浪記 其の零 祝10周年&nbsp


楽天市場 by 吉田類の酒場放浪記 其の零 祝10周年 2003 東京下町 居酒屋をゆく/なにわ大阪 居酒屋をゆく/吉田類DVD/邦画TV の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



この記事へのコメント

この記事へのトラックバック