ひたちなか海浜鉄道 湊線 開業100年 新旧2鉄道マンに聞く (東京新聞2013年10月27日茨城)

【茨城】
ひたちなか海浜鉄道 湊線 開業100年 新旧2鉄道マンに聞く

東京新聞2013年10月27日

http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/20131027/CK2013102702000122.html

 地域の生活路線として、ひたちなか市内をひた走ってきたローカル鉄道ひたちなか海浜鉄道の湊線が今年、1913年の開業から100年を迎えた。夏場は海水浴客の足として活躍したが、経営不振から廃線の危機にもさらされるなど紆余(うよ)曲折を経てきた。東日本大震災でほぼ全線が被災し、「再開は困難」とされながら4カ月後に全線開通し、復活のシンボルとして市民に勇気を与えた。湊線をめぐる物語を新旧2人の鉄道マンに聞いた。 (林容史、柴田久美子)


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◆地元の誇りが廃線救った 茨城交通勝田営業所長 森田 弘典さん(46)


 「満員電車で通勤する人生で終わりたくない」と大学卒業後、Uターン。入社間もなく運転士の育成役でもあったベテランが定年退職し、会社から急きょ、代役を命じられた。運転士の免許を取るため、同じく気動車を走らせていた関東鉄道(土浦市)に派遣され、独身寮に住み込んで、わずか九カ月で免許を取り、実地試験にも合格した。


 父親の弘さんに次ぎ親子二代で那珂湊駅長を務めた。「朝、定刻に車両を送り出し、夜、無事に帰ってくるのを待つ。毎日、当たり前のように走っていたが、実は裏方の大変な努力に支えられていた」と誇る。震災で被災し、「かつての仲間たちが代行バスの車掌をしている姿を見るのは忍びなかった」。


 海水浴シーズンには、新入社員全員が切符売りに駆り出されたほど活況を呈したが、車社会の到来で貨物、旅客とも激減、加えて車両一両でバス三台が買える莫大(ばくだい)な設備投資が鉄道経営を揺るがした。


 全国の中古車両を往年の塗装でよみがえらせ、古い備品をマニアに売っては話題づくりに励んだ。市議会議員たちに存続を訴えて歩いたが、廃線の空気はぬぐえなかった。


 湊線を廃線から救ったのは「先祖が土地を提供してまで湊線を通した那珂湊の人たちの熱い思い」という。JR勝田駅で、湊線が相変わらず一番線に堂々と居座っていることも地元の誇りだ。


 「茨交で持っていたかった」と事業譲渡には残念な思いもにじむ。「でも線路は残ったし、これでよかったのかな」と笑顔をみせた。


◆水戸市出身。日本大生産工学部機械工学科卒。1999年、茨城交通入社。運輸部整備・鉄道課に配属され那珂湊管理駅長、技術係主任など。


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◆私は「応援団」の気持ちで ひたちなか海浜鉄道・柳が丘駅設置対策室 大重 善広さん(35)


 事業を譲渡するまで長く湊線を守ってきた茨城交通に入社、駅員として那珂湊駅で勤務した。一時、会社を離れ、地元栃木に帰ったが今年四月、古巣に戻ってきた。


 「市街地を出発すると、稲穂が揺れる田園風景が広がる。漁港と一瞬だけのぞく太平洋、そして住宅地にサツマイモ畑と、次々変わる車窓の景色。駅の空気も同じで里帰りしたような気分」と満足そう。


 走る車内で結婚式を挙げる「ブライダル列車」、ビアガーデンならぬ「ビア列車」など独自企画や貸し切り用の車両を手配する。「大きな組織ではできないような企画が立てやすくなった。もうけだけでなく、街のにぎわいづくりにも貢献できる」とやりがいを感じている。


 地元那珂湊の商店街や国営ひたち海浜公園とのコラボ以外にも、週末には漁協や農協の朝市、高校生による演奏会などのイベントが持ち込まれる。単なる公共交通機関ではない、街の交流拠点として市民の期待も高い。


 震災で経営危機に陥ったが、乗客が戻りつつある。来年秋には新駅も誕生。「存続が危ぶまれた時、湊線を守るという目標で自治体や住民が一つになった」と地域の後押しに感謝するが、「実績を残さなければ『また』という危機感は常にある」と重責もかみしめる。


 ローカル線で全国各地を回る。次の百年に向け「自分は表に出なくてもいい。何かしら湊線にとって存在感が示せれば。私は湊線の応援団」と控えめに語った。


◆栃木県鹿沼市出身。群馬大教育学部卒。2000年に茨城交通に入社し、那珂湊駅の駅員など。08年JR東日本に移り、13年ひたちなか海浜鉄道入社。営業企画のほか、新駅設置も担当。


<湊線> 1907年に私鉄の湊鉄道が設立され、13年に湊鉄道線が勝田-那珂湊間で開通。太平洋戦争末期の不況で44年に茨城交通(水戸市)に合併。戦後の燃料不足下、海水浴客や水揚げされた鮮魚など地元の旅客・貨物輸送を支えた。車社会の到来で52年をピークに貨物輸送が減少、旅客も減り、無人駅化など経営のスリム化を進めたが2008年、第三セクターひたちなか海浜鉄道(ひたちなか市)に事業譲渡した。黒字化を目前にした11年、東日本大震災で被災、被害額は3億円に上った。4カ月後の7月に全線で復旧した。JR勝田-阿字ケ浦駅間で総延長14.3キロ。14年10月には「柳が丘駅(仮称)」を新設し10駅に。終点阿字ケ浦駅からの延伸も検討されている。





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