【書評】 『鉄道と戦争の世界史』 クリスティアン・ウォルマー著(中央公論新社 3800円)

【書評】
『鉄道と戦争の世界史』 クリスティアン・ウォルマー著(中央公論新社 3800円)
(2013年10月21日 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20131015-OYT8T00398.htm
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評・田所昌幸(国際政治学者・慶応大教授)

政治・経済・軍事が一変

「鉄道と戦争の世界史」クリスティアン・ウォルマー著、平岡緑訳(中央公論新社  3990円)


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機動力の増強と広範囲な長期戦を可能にした鉄道の軍事利用の発展を豊富な図版とともに紹介。鉄道が決めた勝敗の歴史を検証する。


鉄道と戦争の世界史
中央公論新社
クリスティアン・ウォルマー

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鉄道と戦争の世界史 [ クリスチャン・ウルマー ]
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クリスチャン・ウルマー 平岡緑 中央公論新社発行年月:2013年09月 予約締切日:2013年09月


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・発売日:2013年09月
・著者/編集:クリスチャン・ウルマー
平岡緑
・出版社:中央公論新社
・サイズ:単行本
・ページ数:368p
・ISBNコード:9784120045363

【内容情報】
南北戦争、普仏戦争、ボーア戦争、日露戦争、二度の大戦を経て朝鮮戦争、ベトナム戦争に至るまで、機動力の増強と広範囲な長期戦を可能にした軍事利用の発展を紹介する。

【目次】
第1章 鉄道誕生以前の戦争
第2章 戦闘に呼びこまれた鉄道
第3章 鉄の道に敗北した奴隷制度
第4章 学ばれなかった教訓
第5章 戦争の新たなる武器
第6章 世界中が予期した戦争
第7章 西部戦線における大鉄道戦争
第8章 東部戦線での対照的な様態
第9章 またしても同じこと
第10章 線路上の流血

【著者情報】
ウォルマー,クリスティアン(Wolmar,Christian)
英国随一の運輸問題に関する作家でありブロードキャスター

平岡緑(ヒラオカミドリ)
福岡県に生まれる。上智大学卒業

 19世紀前半から鉄道が普及し始めたことによって、巨大な変化が起こった。

 それ以前は陸上でもっとも機動的な輸送移動手段は長く馬を利用することであり、水上輸送の方が概して効率の良い輸送移動手段だった。だが鉄道によって陸上輸送の効率は飛躍的に向上し、同じ地勢でもその政治的・経済的そして軍事的な意味は一変した。

 たとえば近代国家としての統一ドイツも、国土が南北に貫く何本かの大きな河川に分断されている有り様では、東西をつなぐ鉄道なしには成立しなかったであろう。また内陸部の穀物が国際市場で大量に出回るようになり、穀物貿易が増加したことの背景にも鉄道による陸上輸送の革命的進歩があった。鉄道は経済的目的のために開発されたのだが、それまでの常識から見れば桁外れの兵員や物資を急速に前線に送ることができるようになったのだから、戦争の様態も一変することになった。

 訳文がこなれていないために、叙述のリズム感が損なわれているのは非常に残念だが、定評のある鉄道史家による本書は、世界中の軍隊がこの新たな技術を手なずけるのに苦労した様子を見事に描き出す。普仏戦争では、フランスの鉄道の方が設備面では優れていたにもかかわらず、大量の物資が行方不明になったり、指揮官とその兵士がはぐれたりといった大混乱が続出したばかりか、進撃してきたドイツ軍に物資や貨車を利用されるといった失態を演じた。勝利したドイツ側は、急速動員が可能になったので攻撃側有利と考え、綿密な鉄道輸送計画に基づいた作戦を立案したが、鉄道によって防御側の増援の方が容易になったため、第1次世界大戦は塹壕ざんごう戦になってしまった。

 戦争における鉄道の役割は過去のものとなったが、宇宙空間やサイバー空間が政治的、戦略的にどのような意味を持つのかを掴つかみかねているわれわれも、実はさして進歩していないかもしれない。平岡緑訳。

 ◇Christian Wolmar=英国で、運輸問題に定評ある作家、ブロードキャスター。著書に『火力と蒸気』など。

 




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