【吉田類 大衆酒場100選】 名物ミルクワンタンへと続く、お任せフルコースで…  <鳥藤 丸の内>

【吉田類 大衆酒場100選】
名物ミルクワンタンへと続く、お任せフルコースで…
【グルメ】
日刊ゲンダイ2013年9月26日 掲載

http://gendai.net/articles/view/syoku/144777

<鳥藤 丸の内>


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 有楽町はJR京橋口を出て、ガード下を線路沿いに東京方面へと行けば、「有楽町高架下商店街」なるディープスポットに出くわす。時の流れが止まったような、薄暗い一角にあるのが、こよいの河岸「鳥藤」である。戦後間もない昭和24年に創業以来、名物のミルクワンタンで何世代もの男たちを魅了してきた。

 カウンター8席に2人掛けのテーブル3卓、奥に小さな座敷。止まり木に腰かけ、キョロキョロしても、どこにも品書きはない。ではどうするか? 男は黙ってサッポロビールじゃないが、酒を頼めば後はお任せ、料理がコース仕立てで運ばれてくるのをじっと待てばいい。まずは前菜とばかり、鶏がらスープとお新香で始まるのが最近のお決まり。胃を温めてから飲めというのだろう。豆腐の酢味噌がけ、がんもに厚揚げなどが盛られたおでんが出てきて、いざ特製フルコースの幕開けだ。

 両皿ともあっさりとして、先付けとして申し分ない。瓶ビールをチビチビやりながら食べ終えると、見計らったように、豆アジの干物、豚のカシラの塩焼きである。豆アジはしっかりと塩気があって、ビールが進む。カシラもモツ焼き酒場顔負けの軟らかさで、うまい。大根おろしとオクラの和え物、生野菜サラダと続き、腹もたまってきたところで、ふと気がついた。ひと皿ごとにメリハリというか、緩急があるのだ。女将の藤波須磨子さんが言う。

「肉、魚と続けば、次は野菜を出した方が飽きないでしょ。お酒をしっかり飲まれる方が多いからね。ちゃあんと気を使っているんですよ」

 酒を日本酒に切り替えれば、アルマイトの小さなやかん入りで出てきた。しみじみ飲めば、秋の夜長がしみてくる。ジャッ、ジャッと厨房から中華鍋を振るう音が聞こえてくれば、いよいよメーンのお出ましだ。出来たての納豆チャーハン、湯気を立てた名物ミルクワンタンである。鶏がらスープにミルクを加え、ワンタンを浮かべた丼に口をつける。深刻な食糧難の続く戦後間もない頃、「栄養価のある食べ物を」と、初代がボルシチをヒントに考案しただけあって、大きな野菜がゴロゴロしている。ワンタンをれんげでツルリとすすったら、濃厚にしてまろやかな味が広がっていった。なんだか優しい気持ちになる。

 気になる勘定はというと、瓶ビールと日本酒込みで、計3000円ナリ。心も体もしっかり満たされた。女将には聞けなかったが、女将はご主人の藤波正規さんを数年前に亡くされ、今もその心痛を抱えているのではないか。がんばってください、どうかつづけてください、と祈った。
(取材・カメラ 吉田慎治)

<ボトル1本空けてもOK>

▽吉田類…「メニューがないから、飲みすぎて酔っぱらったらどうしようって思いますよね。でもご安心を。ほどほどになら、何本か飲んでも3000~3500円。焼酎のボトルを1本空けても、4000~4500円ですよ。料理はフルコースじゃなくてもよく、『2軒目だから軽くね』なんて伝えれば、ちゃんと品数も抑えてくれますよ」

▼よしだ・るい 高知県出身。画家、イラストレーターの傍ら、酒場詩人として全国の酒場をめぐる。著書に「酒場歳時記」など。BS―TBS「吉田類の酒場放浪記」出演中。

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