「富士山」世界遺産決定 (中日新聞2013年6月23日 静岡)

【静岡】
「富士山」世界遺産決定
中日新聞2013年6月23日

http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20130623/CK2013062302000083.html


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雲の間から姿を見せる富士山。手前は三保松原=22日午後0時13分、静岡市沖の駿河湾で、本社ヘリ「まなづる」から(内山田正夫撮影)

 【プノンペン=加藤隆士】カンボジアの首都プノンペンで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会は二十二日、日本政府が推薦している「富士山」(静岡、山梨両県)の審査を行い、「信仰の対象と芸術の源泉」と評価して世界文化遺産に登録することを決めた。構成資産からの除外を勧告されていた三保松原(みほのまつばら)(静岡市清水区)も含めて登録されることになった。


 文化庁によると、国内十七件目の世界遺産。文化遺産としては十三件目。自然遺産は四件が登録されている。


 登録決定を受け、近藤誠一文化庁長官は「喜びや悲しみを分かち合ってきた日本人の美しい心のシンボルが富士山。文化遺産として認められたのは、日本の歴史に残る出来事」と語った。静岡県の川勝平太知事は「三保松原が一体として認められたのは奇跡だ」と話した。


 登録は富士五湖や白糸ノ滝などを含む約七万ヘクタールが対象。古くから信仰の山とされ、荘厳な姿が江戸時代に盛んに浮世絵に描かれるなど、日本独特の芸術文化を育んだ。


 昨夏に現地調査したユネスコの諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)は四月、富士山を「日本の象徴で、その影響は日本をはるかに超えている」と評価して登録を勧告した。一方、三保松原は富士山から四十五キロ離れている点や、消波ブロックなどで景観が損なわれている点を問題視。除外を登録の条件とするよう勧告していたが、各委員国から「三保松原も含めるべきだ」との意見が相次ぎ、勧告を覆しての登録が決まった。


 富士山は当初、自然遺産での登録を目指した。一九九四年に環境団体などが二百万人を超える署名を集めたが、ごみやし尿の問題が解決できず、国内の候補地に選ばれなかった。二〇〇三年には政府の検討会で「火山の地形として世界的に珍しくはない」との理由で候補地から落選。これを機に文化遺産を目指す方向に変わった。

◆【解説】「後世に」考える契機


 富士山が三保松原を含む形で世界文化遺産に登録された。諮問機関の勧告を覆しての完全登録は、日本政府の各委員国への働き掛けに加え、すぐに景観保全に動きだした地元の熱意も影響したはずだ。積年の悲願達成を心から喜びたい。


 先行する国内遺産と同様、今後は観光客の急増が予想される。富士山はすでに年間三十万人が登り、早朝の山頂付近は特に混雑する。勧告では山肌の崩落や登山者の安全確保への懸念が示され、ユネスコは二〇一六年までに対策をまとめた報告書の提出を求めた。過剰利用(オーバーユース)への対応は待ったなしだ。


 静岡、山梨両県は今夏の入山料の試験導入を決めた。ただ、千円では登山者の数はそれほど減らないだろう。「入山料と入山抑制は別問題」(日本山岳協会の尾形好雄専務理事)との指摘もある。登山者の人数制限も議論すべきだ。


 観光客の分散化も一つの方策だ。構成資産の多くは五合目以下にあり、登山以外にも楽しみ方はある。情報発信の拠点となる「世界遺産センター」や市民ガイドの活用を通じて富士山の魅力を分かりやすく紹介する体制づくりが欠かせない。


 登録はさまざまな課題を突きつけるが、何より重要なのは世界遺産を持つ誇りを地元にもたらすことだ。人類共通の宝となった富士山をいかに後世に受け継いでいくか。県民それぞれが考える契機としたい。

(木谷孝洋)


 <世界遺産> 歴史的建造物や遺跡の文化遺産、貴重な生態系などの自然遺産、両方の要素を持つ複合遺産の3種類ある。世界遺産条約に基づき人類共通の財産として保全を図ることが目的。各国政府が国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦した後、諮問機関による現地調査と勧告を経て、毎年の世界遺産委員会で登録の可否が決まる。今年の委員会開幕前の時点で、登録総数は文化遺産745件、自然遺産188件、複合遺産29件の計962件。新規登録の審査は年々厳しくなっている。

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