サラリーマンが愛する巣穴で女将の笑顔肴に角打ちできる幸せ  武蔵屋酒店(東大井)

サラリーマンが愛する巣穴で女将の笑顔肴に角打ちできる幸せ
NEWSポストセブン2013.03.26 16:00



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【サラリーマンを迎える3代目女将の友野敏子さん(63)】

 大正3年(1913年)の創業で、ちょうど今年が100周年の『武蔵屋酒店』。角打ちを始めたのが昭和27年(1952年)ということで、こちらももう60年の歴史を積み重ねている。
「ここの娘だから、小学生の頃からその風景は見てきました。国鉄マンや大井港で働く人たちが仕事を終えるとすぐに飛んできて、いつも賑わっていましたね。当時は荒っぽいお客さんもいましたが、最近はやさしくて楽しい人ばっかり」と、女将の友野敏子さん(63)。
 店は、「ふたりで、こじんまりとやろう」という夫婦の決断により、平成22年に8階建てに建てかえられたビルの1階に入った。いっぱいになっても15人ほどと、広さがそれまでの半分になっている。
飲食店が新しくなると、雰囲気が悪くなったの味が落ちたのといった悪評がたち、客離れする例が少なくないが、この店は違った。
「いつ来ても同じ温かさで包んでくれる場所でね。ここにいるだけで気持ちがいいんです。夕方を過ぎるとほろ酔い動物になるぼくらサラリーマンにとって、広かった時代も懐かしいけど、当時以上に快適な巣穴になりましたね」(50代)
「ラーメン屋やレストランじゃないんだから、そんな悪評は無縁だね。新しくなろうと狭くなろうと、うまい酒を安く飲めるというこの店のよさは変わらないんだから。それより、女将さんをはじめ、ここでしょっちゅう会う人たちの顔が近くなって、前より楽しくなっちゃったと思うんだけどな」(40代)
 といった声に代表されるように、やさしいサラリーマンたちには、逆に、好感度が増した。


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【壁に貼られた日本列島地図。「亡くなった主人と車で全国を旅した思い出です」】

 一般的にコの字型のカウンターを採用している角打ちの店は、多くの場合、店主が内側にいて、客は外周で飲むケースが多い。だがこの店のコの字カウンターは、右側にある数十年来使われてきたラワン製も、左側の3段に積み上げたビールケース製もすべて壁に密着。中央側にレジがあり女将がいて、その奥がトイレというレイアウトになっている。つまり、だれもが一緒にコの字の内側で飲むことになる。
「先客たちの顔をひとわたり見て知った顔にあいさつ。酒を選んで、つまみを選んで、奥でその数百円の支払いをして、自分のいる場所を決めて、グラスにシュワーッ。ここまでの儀式めいたルーティンで、もう心が浮き浮きするんです」(週3ペースの40代)
「そのルーティンの楽しさは、まったく同感。武蔵屋だからの味ですよ。でも今日のぼくは、彼と最後が違う。シュワーッではなくて、プシュッなんです。焼酎ハイボールのドライでいきます。甘さが抑えられているこの柔らかい口当たり、若い連中ににも教えてやりたいんだけどね」(ほぼ毎日来ている50代)


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【「お客さんには、乾き物と缶詰で飲んでもらっています」】

 店には、JR京浜東北線大井町駅東口からほんの2~3分歩けば着いてしまう。実はそこまでの間に昔ながらの横丁や小路が続き、立ち飲みのできる店が数軒ある。それらはすべて立ち飲み形式の居酒屋であって、角打ち店ではないのだが、酒をこよなく愛する武蔵屋の常連たちは、そんな店のはしごも楽しんでいるらしい。
 はしごの途中で出会った彼らがその店を出るときに、最近よく使っているんだという符丁を、これから東急大井町線で家に帰ろうとしていた客が、どや顔でこっそり教えてくれた。それが「スカイツリーにいるよ」だ。
 屋号の武蔵を数字化すれば634。世界一の東京スカイツリーの高さもその語呂合わせで決まったというが、それをそっくりいただいて、「先に武蔵屋に行ってますよ」と、残っているお仲間に伝えているというわけだ。
 ところで、ここまで顔を見せてくれないご主人だが…。
「主人は、店を新しくした半年後に病気で突然逝ってしまったんですよ。壁にたくさん貼ってある日本地図は、主人と車で全国を旅した思い出なんです。息子が配達担当で助けてくれてますが、店の方はわたしひとりですからね。つまみを温めたり焼いたりというところまで手が回らなくて。お客さんには、乾き物と缶詰で飲んでもらっています」
 でもそんな心配は取り越し苦労のようだ。「なんといってもわれわれの巣穴ですからねえ。こんな雰囲気の中で、うまい酒を安く楽しく飲めればそれでいい。女将の笑顔もあるし、ぼくらは幸せだよ」と、元気いっぱいの40代サラリーマンが、まとめてくれた。


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【大正3年創業。ちょうど今年が100周年の東京大井町の『武蔵屋酒店』】

■ 武蔵屋酒店
【住所】東京都品川区東大井5-4-16
【電話】03-3471-1516
【営業時間】16時半~21時
【定休日】土、日、祝日。焼酎ハイボール250円、ビール大びん380円、サワーセット390円。つまみは、乾き物(柿の種、げそ、こまい、鮭トバ等)は、80円~120円中心。缶詰はコンビーフ250円、牛肉大和煮320円など。 

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