<食卓ものがたり> シラス(神奈川県茅ケ崎市) (東京新聞2013年4月27日)

【暮らし】
<食卓ものがたり> シラス(神奈川県茅ケ崎市)
東京新聞2013年4月27日



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シラスの好漁に思わず笑みがこぼれる瀬山航平さん=神奈川県茅ケ崎市の茅ケ崎漁港で


 午前十時半すぎ、神奈川県茅ケ崎市の茅ケ崎漁港。今沢雄三さん(47)、瀬山航平さん(20)ら三人の漁師が乗った、シラス船曳(ふなび)き網漁の万蔵丸(まんぞうまる)が帰ってきた。ロープを含めて全長四百メートルの網を、一隻の船でゆっくり曳いてシラスを捕る。三人とも笑顔だ。

 今沢さんは「今日は一日で四百キロくらい。最近ではいい方だね。自然相手だから全くダメな日もあるし、一網で四百キロということもある」と話す。

 シラスはカタクチイワシなどの子ども。鮮度が落ちるのは早い。船上で氷につけ、帰港すると、市場用を運び出した後、残りをトラックで自宅加工場へ。釜揚げシラスにするため、さっとゆで、庭先で天日干しする。この日は瀬山さんら六人で作業。アジの子などが交じっており、丁寧に箸で取り除く。

 その場で捕れたてのシラスを生で食べさせてもらった。しょうゆもショウガも要らない。一匹一匹がゼリーのような食感で、魚のうま味を主張していた。出来たての釜揚げシラスはふっくらと仕上がり、こちらも感動もの。

 神奈川県のシラス漁は、年間水揚げ五百トン程度。和歌山県、静岡県などでも盛んだ。今沢さんは「網元万蔵丸」という会社組織でシラス漁を手掛け、社名と同じ名前の料理店を地元で経営する。神奈川県漁業士会の幹事を務める今沢さんは「県内は生産者自ら加工・販売まで行うスタイルが多い。茅ケ崎でシラス漁をするのは四軒で、三軒が店を出している」と説明する。

 日の出とともに出漁した万蔵丸は、午前八時ごろ帰港してシラスを降ろす。そして二度目の漁に出る。八時に戻るのは、新鮮なシラスをランチタイム用に求める業者に届けるため。湘南エリアでは、シラスを看板メニューにする飲食店が多い。「悪天候で出漁できない日を除き、どの店も昼食時には今朝捕れたシラスを出しています」(茅ケ崎市観光協会)という。

 東京育ちの瀬山さんは高校卒業後、漁師の道を選んだ。「湘南の海で仕事をしたかったから」。黙々とシラスの釜揚げ作業を続けながら、日焼けした顔でほほ笑んだ。

 文・写真 草間俊介

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