JR九州「観光列車」成功の秘密 (東スポWeb2013年4月24日 )

JR九州「観光列車」成功の秘密
東スポWeb2013年4月24日 東京スポーツ新聞社

http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/money/134953/

 普段乗っているJR、私鉄、地下鉄、新幹線…鉄道とは地点Aから地点Bへの“移動手段”に過ぎない、というのが当たり前の感覚。しかしその価値観を引っくり返して鉄道を“観光目的”にすることに成功し、利用者を増やした鉄道会社がある。JR九州だ。なぜJR九州はその路線を選び、成功したのか。同社営業部営業課(観光)で観光列車の企画を立ててきた石田央副課長に聞いた。

JR九州の列車たち


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  JR九州は早くからデザイナーの水戸岡鋭治氏を起用。「ソニック」など独特な列車で知られていた。観光列車が増えたのは2004年の九州新幹線部分開通がきっかけだ。同年「いさぶろう・しんぺい」「はやとの風」、09年「SL人吉」「海幸山幸」、そして九州新幹線が全線開通した11年に「指宿のたまて箱」「あそぼーい!」「A列車でいこう」が運行を開始した。
 
  特徴は通勤車両とは全く違う特別な内外装。例えば指宿のたまて箱は内装に木を多用し、海側には景色を眺められる回転椅子を設置。本棚まである。何より乗客を驚かせるのは、駅で乗り降りする時に噴き出す白い霧だ。これはたまて箱を開けた時に出る煙をイメージしたもの。外装の白黒ツートンは、たまて箱を開けて黒から白に髪の色が変わる場面をイメージした。観光地のずっと手前、駅で列車に乗る時から、乗客は“非日常”を感じられるわけだ。
 
 ではなぜこうした車両を多数走らせるようになったのか。石田氏によればその背景には「危機感」があったという。
 
「九州はマイカー文化。また高速バスも発達しており、日帰りバスツアーも盛んです。日常の移動に鉄道を使っていただけるのは5%強ほど。実は鉄道事業は赤字で、また九州は少子高齢化のスピードが全国平均より早い。交流人口を拡大するには、観光に力を入れるしかない。苦しいからこそ始めたことです」

 軸になったのは九州新幹線だ。「新幹線によって縦の移動時間が短縮されました。南九州には良い観光地がたくさんあるので、スローな旅を楽しんでいただきつつ、観光地に到達していただこうと。ただし鉄道を選んでいただける理由、車では味わえない旅情をご用意しなければなりません」
 
 乗ってもらうために乗りたくなる列車を用意しよう――。7人いる石田氏のチームは、それぞれの担当地域へ何度も足を運んで地元との交流と情報収集を行い、歴史、伝説、グルメ、観光地などの情報を集め、そうした情報を元に観光列車を企画してきた。
 
 こだわるのは「情報は全て自分の足で稼ぐ」ことだ。「雑誌などに委託しないのか?とよく言われますが、我々は自分の目で見て感じながら探した、自信を持って紹介できるものを発信したいと考えています。社長の唐池(恒二氏)も『手間をかけなさい。手間をかけてこそいい企画につながる』とことあるごとに言っています」
 
 JR九州の観光列車名物のひとつに沿線の人が列車に手を振る、ということがある。これは地元との話し合いで生まれたものだ。「列車を運行して終わりではなく、地元の方々と作り上げ、トータルで鉄道旅っていいなと思っていただけるものを目指しています」
 
 ひとつの観光列車を走らせるまで、早くて2年の準備期間が必要だという。時間はかかるが「列車をきっかけに町作りや観光資源の再発見などの広がりも出ています」。また第三セクターの肥薩おれんじ鉄道が観光列車「おれんじ食堂」を走らせるなど、周辺にポジティブな影響も与えている。
 
 指宿のたまて箱の終着駅である指宿駅では、利用者が一日平均627人から905人へと4割増えるなど、様々な形で効果が出ている。



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