「しろばんば」舞台閉校に 井上靖母校 伊豆・湯ケ島小 (東京新聞2013年3月18日 夕刊)

【社会】
「しろばんば」舞台閉校に 井上靖母校 伊豆・湯ケ島小
東京新聞2013年3月18日 夕刊



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湯ケ島小の校庭に設置され、児童たちに愛される「しろばんばの像」=静岡県伊豆市で


 昭和の文豪・井上靖(一九〇七~九一)の母校で、自伝的小説「しろばんば」の舞台にもなった静岡県伊豆市立湯ケ島小学校が二十三日に閉校式を行い、百四十年の歴史に幕を下ろす。少子化に伴う学校再編による閉校を惜しむ声が上がる一方で、井上文学を生んだ郷土としての意識は、地元の児童や住民に根付いてきた。伊豆市は将来、「文学の里」の核とする構想も描く。 (山田晃史)

 「どの教室にもガラス戸の替わりに障子がはまっていて、障子の紙を破きでもしようものなら、徹底的に糾明された」。しろばんばには、教室の数や学校生活などの詳しい記述がある。

 井上は一九一四(大正三)年四月、湯ケ島小に入学。一九年十二月まで、ほぼ六年間在籍。伊豆の山村で幼少期を過ごした思い出が作品に結び付いた。

 一八七三年にできた湯ケ島小は、一九二九年に現在の場所に移転したが、今の校内は井上作品であふれている。正門を入ると目に飛び込むのは、しろばんばの主人公・洪作と、おぬいばあさんのブロンズ像だ。

 校舎の一室には、井上の書斎を模して作品を展示する資料室もある。

 井上は自作の詩「地球上で一番清らかな広場」を湯ケ島小に寄贈。詩は校庭や校舎内のいたる所に飾られ、児童たちは集会や行事のたびに暗唱している。国語や総合学習などにも井上文学を取り入れている。

 しかし、児童数は三六年の七百十人をピークに、今では八十七人にまで減った。湯ケ島小では十九日に最後の卒業生十八人を送り出し、在校生は四月から、ほかの二校と統合した天城小(伊豆市青羽根)に通う。

 湯ケ島小OBの杉山宗治校長は「閉校は残念だが、子どもたちには郷土・湯ケ島への誇りを持ちつつ、大勢の新しい友だちと成長してほしい」と願う。井上靖作品読書感想文コンクールで最優秀賞の湯ケ島小五年の田村幸輝君(11)も「しろばんばに登場する学校がなくなるのは悲しい」と惜しみつつ、「四月からは、ほかの学校の子にも井上先生について広く伝えたい」と使命を感じている。

 市は閉校後、湯ケ島小の校舎を改装して文学館の機能を持たせ、旧井上邸などの文化施設を湯ケ島地区に集める構想を練るが、実現時期は未定。

 井上靖文学館(静岡県長泉町)の松本亮三館長は「一番大切なのは施設ではなく地域全体で井上文学を受け継ぐ意識を持つこと」と話した。

 井上は五九年のエッセーで故郷の伊豆について書いている。「故里(ふるさと)に帰ることが好きだが、それは故里の子どもたちを見ることができるからである。子どもの頃の私がその中にいる」

 <井上靖> 北海道旭川町(現旭川市)生まれ。幼少期を母方の実家がある伊豆の湯ケ島で過ごした。小説家となり、50年に「闘牛」で芥川賞を受賞。

 湯ケ島などを舞台に、少年が血のつながらない祖母と土蔵で暮らしながら成長する姿を描いた自伝的小説「しろばんば」を60年に発表。しろばんばとは、湯ケ島などで夕方に白い綿毛をつけて飛ぶ虫のことを呼んだ。76年に文化勲章を受章。


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