東京新聞2012年11月29日 山楽のススメ…シカの厳しい生存競争

【山楽のススメ】
シカの厳しい生存競争
東京新聞2012年11月29日


 
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丹沢では今日も、どこかでシカのドラマが繰り返されている

 登山者に人気のある丹沢山塊は、たくさんのシカが生息する山として知られている。これは丹沢のある山小屋の主人に聞いた話だ。
 ある年の秋、山小屋にいると、外でカツン、カツンという乾いた音がした。外を見ると、2頭の雄ジカが角を突き合わせて戦っていた。両方ともすごい力だが、左にいる方が少し劣勢に見えた。すると、右にいたシカが大きく反り、一撃を加えた。一瞬、左のシカの動きが止まった。すかさず右のシカが頭突きをくらわした。それで勝負は決まった。腰が引けた左のシカは「ベ、ベ、ベ」と情けない声を出しながら去って行った。肩から力が落ちているのが分かったという。
 勝ったシカは雄たけびを上げた。それがちょうど出ていた満月の中に入っていて絵のように美しかった。これでシカはこの辺りの縄張りの権利を獲得したのだ。後日、何頭ものメスを引き連れて、山の中を闊歩(かっぽ)していた。
 負けたシカはどうなったか。勝ったシカの縄張りから去るのがオキテである。後日、山小屋の主人が山を歩いていると、木陰で死んでいるシカを見つけた。見ると、あの負けたシカだった。やはり、争いに負けたシカは、ショックで生きる希望をなくして死んでしまうようだ。
 「それもこれも強い遺伝子を残すための自然の摂理なんだろう、かわいそうだが」と主人は言った。
      ◇
 ◆メモ 丹沢は神奈川県の北西部にある東西約40キロ、南北約20キロの山塊で年間登山者数は約30万人。山小屋は20軒ほどありほとんどが通年営業している。
 (日本大学講師・ライター、工藤隆雄)
 

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